2012年10月12日金曜日

フットパスの研修旅行

10月9日から11日の3日間、富士癒しの森研究所の全スタッフで北海道へフットパスの研修旅行に行ってきました。
「フットパス」とは、ごく単純に言えば「歩くための道」ですが、歩くことを楽しむための道でもあります。歩くことを楽しもう、とアイデアと労力を持ち寄り、日本各地で地域住民主体のフットパスづくりが広がり始めています。「癒しの森プロジェクト」でもフットパスは、森林を楽しむ重要な要素として、そしてフットパスを創る・維持する作業自体も楽しめる活動として、着目しています。
山梨県でも多く設定されてきていますが、今回は先進地であり、地域に十分浸透し始めている北海道に出かけてきました。
最初に訪れたのは、北海道大学の苫小牧研究林。市民が親しめる森林として整備されてきたことで知られており、我々が訪れたときも、多くの市民の方々が思い思いに散策を楽しまれていました。
我々も全く予想していなかったサプライズで、この整備を進めてこられた元林長に偶然にもお会いすることができ、整備方針や経緯などをお聞きすることができました。(詳しく知りたい方はこの本がお薦めです。)
次に訪れたのは、苫小牧東部工業団地。団地の大部分が緑地のまま維持されることになっており、そこで近年、市民による森づくり、フットパスづくりが行われ始めています。
地域住民らでNPO法人が結成されており、薪ストーブの薪を作りがてら森の見通しを良くし、フットパスを開設する、という取り組みが行われています。
森林療法を取り入れている地元の精神科医の方と意見交換する機会もアレンジしていただいたのですが、印象的だったのが、森の中で活動することは、体の生理的を改善するだけでなく、人の社会性、コミュニケーション能力を高める、ということでした。そして治療を要する人にとってだけでなく、普通の人にとって意義のある、「プライマリー・ケア」として位置づけられるということでした。身体的にも精神的にも豊かな状態を保つ、そのための日々の営みとして森との付き合いがあり、そのためのインフラとしてフットパスは重要な要素なのかもしれない、と考えさせられました。
また、人によって何を楽しみと感じるかも千差万別であるというのも興味深い点でした。
ここで作られてきたフットパスは、林床のササを刈り払っただけの簡単なものです。道を開いた後は年に数回、刈り払い機でメンテナンスをするそうですが、林業関連に携わるものとしては「夏の下刈り」はもっとも嫌がられる仕事の定番ですが、これも好き好んでやられる方がいらっしゃるんだそうです。そうなると、維持管理も煩雑どころか、一つの魅力となりうるということです。
ここでは、この2,3年で数キロの道を開き、維持しているということで、ボランティアの作業量・内容でやれることの可能性を知りました。
2日目は平取町の「けもの道フットパス」を視察しました。「けもの道フットパス」って何だろう、と思っていましたが、無数に走るけもの道をつないでフットパスのルートを設置したので、このように読んでいるそうです。もちろん、まだまだ「けもの道」としても使われていて、ところどころに新鮮なシカの足跡を見ることができました。
無理やりルートを決めても、心地よく歩けなければ、だれも歩かなくなったり、横道が作らてしまったりするもののようですが、ここの場合、獣たちが作ってきた、いわば実績のあるルートをそのままフットパスとして活用しているのがユニークですね。
この日の午後は、上富良野町を訪れて、この町のフットパスの仕掛け人の方と一緒に農道を活用したフットパスを視察しました。農地の合間を縫う部分が多く、見通しのよさと解放感が特徴的でした。それにしても十勝連峰の山並みは絶景でした。
これまで見てきたフットパスは、複数の土地所有にまたがらない形で作られていましたが、ここの場合は、いくつもの私有地、町有地をとおってルート設定されていて、それぞれの土地所有者に交渉する過程の話をうかがうことができたのも収穫でした。そして、フットパスができたことにより、町民の自意識が変わってきた、町民からも感謝されてきている、というお話が印象的でした。
フットパスにとって最大の課題はトイレ、ということで、最終日は旭川にあるバイオトイレのメーカーさんを訪問しました。仕組みとしては、おがくずなどの木クズを使い、加温・攪拌しながら不要な水分の蒸発、排泄物の分解をするというシンプルなものでした。
お話をうかがうと、そもそも「水で流す」と真逆の、「いかに水分を除くか」という発想に基づいているため、自然の中のトイレということもさることながら、都市の下水問題、災害時のトイレ問題に解決に貢献しうるものだということで、もっと社会全体でこういうタイプのトイレについて、認識が深まる必要があると考えさせられました。
また、木クズはチェーンソー屑やチップなどでも良い、むしろオガクズより良いのでは、ということで、森林整備とうまくつなげられる可能性も感じました。

足早の視察旅行でしたが、非常に中身が濃く、充実した3日間でした。
富士癒しの森研究所では、初冬を目途に、フットパスを題材としたワークショップを開催することを予定しています。詳しいことが決まり次第、アナウンスいたします。

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