2017年7月23日日曜日

全学体験ゼミナール「癒しの森と地域社会(夏)」

22日の山中湖:最低16℃、最高29℃、晴れ
23日の山中湖:最低20℃、最高23℃、曇り
この週末は、1・2年生対象の全学体験ゼミナール「癒しの森と地域社会(夏)」の現地実習が行われました。今年から始まった講義でどれほどの受講生が来てくれるか不安でしたが、10名の学生が参加しました。
この講義では、地域社会の事情を考慮しつつ「癒しの森」に関する課題を解決するようなアイデアを練り上げることが目的になっています。
今回の学生は、富士癒しの森研究所にとっても、村にとっても、地域住民や観光客にとっても、中途半端な理容管理状況になってしまっている湖畔広場について、地域住民のQOL(Quality of Life:生活の質)に資するための方策を考え出すことが課題として与えられていました。
このアイデアを出すためにアイデアソンという手法を使うことが、今回の講義の特徴です。アイデアソンとはアイデアとマラソンから作られた造語で、いくつかのプロセスを経て集中的にアイデア出し、そのブラッシュアップに取り組むワークショップの一つです。

実習では、まず研究所の林内でレクリエーション活動に適した森林を管理する上での注意点を説明し、人が集う場所の自然環境を維持するには相応のコストがかかることを理解してもらいました。

その後、学生は3つの班に分かれて、湖畔広場に関係する主要な関係者に情報収集に行きました。

湖畔広場では、利用者の代表として、頻繁に利用してくださっている方にインタビュー調査をさせていただきました。

村役場では山中湖村のまちづくり政策全般を担当されている職員の方々にインタビューさせていただきました。
大学の立場や湖畔広場の管理状況については、教員が学生のインタビューを受ける形で情報提供しました。

3箇所で得た情報をお互いに報告しあっていよいよアイデアソンの開始です。
各班に分かれて、付箋を使ったりしながら、まずはアイデアを出し合います。

その後、整理や絞り込みを行って、班としてのアイデアをポスター形式にまとめてもらいました。
3班のアイデアをそれぞれ披露してもらい、班ごとに練り上げられて来たアイデアを評価しました。どれも一長一短があるとわかったところで、一番評価の高かったアイデアをベースにさらに、全体で案の練り上げをしました。

案が出来上がったら、いよいよお披露目です。
発表会には、インタビューに答えてくれた方や、地域づくりに興味を持つ地元住民や別荘住民の方にも集まっていただきました。
学生が、アイデアを披露する方法として選んだのは、なんと寸劇。

観客の笑いを誘いながら、コンパクトに学生が考え出したアイデアを伝えることができたようです。
参加くださった皆さんには概ね好評だったので、学生も安心したようでした。実現性の点で、厳しい指摘もいただいたことも有益だったと思います。

2017年7月22日土曜日

今年も行いました

本日の山中湖:最低16℃、最高29℃、晴れ
真夏に突入していくとともに、虫たちも活発に活動します。
日々の作業ではウルシかぶれやマダニなど、色々なことに注意を払って作業をしますが、この時期、特に心配なのは蜂刺されの事故。特にクロスズメバチ類は地蜂と言われるように地中に巣をつくるため(まれに木のむろや建物の壁などに作った例もあります)、刈り払いなどの作業中、気付かず巣を踏んで怒って出てきた蜂に刺されてしまうのです。注意を払っていても、小さな黒い蜂の出入りを草むらや藪から見つけるのはなかなか難しい。

そこで今年も、全国地蜂連合会の皆さん、恵那農業高等学校のHEBO倶楽部の生徒さん(ニューフェイス4名!)と顧問の先生に来ていただき、蜂刺され事故の起きそうな巣を除去する試みを昨年と同様に行いました。

今回3つの巣を発見し、そのうち2つは、運動部の学生さんが8月から夏合宿で利用するグラウンドの隅と、植生調査を行う実証林内で、どちらも確実に人が接近する場所でした。

この写真、見つめている先に巣があり穴から出入りする蜂を見ている様子なのですが、巣の場所わかりますか?巣があっても周辺と違いがありません。作業していたり歩いている時に気が付かず踏んでしまうのをご想像いただけるかと思います。

そして今年も、全国地蜂連合会のベテランさんに高校生が知識と技術を学び体験する場として地域文化の継承に一役買えたことは嬉しい限りです。

2017年7月19日水曜日

2014年の実験結果に関する論文が発刊されました

富士癒しの森研究所では、実証林のうち、弱度間伐(15%程度)を行った区画(間伐林)と長期生態系観測のためにしばらく手を入れていない試験区(放置林)を用いて、癒し効果に関する実験を行いました。
このたび、その結果の一部が論文として公表されました。

この論文では、間伐林と放置林を比較すると、心理的な効果としてはどちらも一定の癒し効果のようなものが認められましたが、一方で、景観の評価という側面では、間伐林において明確な好評価が得られました。森林が持つ癒し効果のポテンシャルが確かめられたとともに、景観評価と心理的な効果は必ずしも並行して影響を受けるのではないという興味深い結果となりました。今後、このあたりのメカニズムを解きほぐしていくこと、また、森林管理への指針を導き出していくことが課題となってくるかと思います。

2017年7月18日火曜日

アメリカからのお客様の来所

本日の山中湖:最低17℃、最高30℃、晴れ
すっかり山中湖も真夏の様相となりました。
本日は、富士山に関する研究をされている歴史学者アンドリュー・バースタイン先生がルイス・アンド・クラーク大学の学生さんたちを連れて来所されました。
前半は、富士癒しの森講義室で、この地域の地理的特徴と、かつての土地利用について、特に入会に焦点を当てながら、解説しました。
学生さんたちは地理学を専攻しているそうで、何度も何度も質問が寄せられました。
後半は、座学で学んだことを確かめるためにも、林内を歩きながら、地質や植生の特質、人間の植生管理の影響などについて観察しました。

少々暑かったですが、気持ちの良い天気の中、充実したフィールド体験となったようです。

2017年7月12日水曜日

センサーカメラおすすめ画像

富士癒しの森研究所では東京大学演習林全体で取り組んでいる基盤データ整備の一環として、林内にセンサーカメラを設置して動物の動向を調査しております。


毎月1回くらいのペースで、おもしろい画像についてご紹介していきたいと思います。

第1回目はシカです。カエデの葉が食べたくて直立しております。

ちなみにセンサーカメラに写る動物の大部分がシカです。
おすすめ画像も、今後もシカ率が高いものと思われます。
よろしくお願いいたします。










2017年7月3日月曜日

特殊伐採の見学

建物や電線の付近に、アカマツの斜めの枯れ木があり危険な状態だったので、
業者さんに特殊伐採をお願いしました。
高さ15mくらいありそうです。



枯れ木に登り、上から順に切ってはロープで下ろすという作業です。
せっかくなので勉強のために見学させていただきました。


道具準備のようすです。さまざまな大きさのチェンソーがあります。
ロープもたくさん使います。

上のほうの作業はうまく写真が撮れなかったので、
もう真ん中くらいですが、様々なロープで安全に気を付けながら
1mくらいずつ切って下ろしていきます。
切った木を下ろす際などは、樹上の方と的確に意思疎通して
下の方がロープ操作などを行っておりました。

朝から始まって、3時前にはご覧のとおり完了いたしました。
周りの木を全く傷つけずにお見事でした。





実証林での実験結果が論文として公表されました。

2013年に実証林を整備する際に弱度の助間伐作業を施しましたが、その前後で、「癒し機能」がどう変わるのかを検証した実験結果が論文として公表されました。

<過去記事から>
間伐前:5月の実験
間伐作業
間伐後:10月の実験

Progress in Earth and Planetary Science (PEPS) という雑誌にてオープンアクセスの論文として公表されています。


2013年の助間伐整備は、軽いものでしたが、景観評価や心理効果に大きな違いを及ぼすものではありませんでした。
森林景観が遮蔽されていた時に比べて、森林景観を見ていた時に間伐前後いずれの場合にも明白な心理効果が得られたということは、カラマツ林というこの地方に多いタイプの森林がもつポテンシャルの高さを示していると見ることができるかもしれません。
より強度の間伐ではどうなるのか、良好な森林景観を維持するための間伐は、薪材生産の需要とうまく結びつくのか、といった点も今後、検証していきたいと思います。