2010年7月7日水曜日

火入れ実験



本日の山中湖:最低19℃、最高27℃、曇り


東京大学演習林所属4年生の卒論研究の一部として、3林班・シラカバ林の一部で火入れ実験が7月6日に行われました。北海道では山火事が起こると、しばしばシラカンバやウダイカンバなどが更新し、カンバ類を主体とした二次林となっている場所をよく見かけます。今回は、火が入ることによって、もともと土中に埋もれていた種子(埋土種子といいます)のうち、どのような樹種の発芽が促進されるかを調べることを目的としました。



火入れ実験では、まず、ウダイカンバ林の土壌を採取した上で、何も処理しないで土を播きだす「コントロール区」、オーブンで3時間熱した土を播きだす「加熱区」、土を播いた後、そこに火入れを行う「火入れ区」の3処理区を3反復で設定しました。また、実験区を設定したシラカンバの地面をそのまま焼いただけの処理区も一つだけ設定しています。


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天気予報では雨模様だったのですが、火入れ時間中は雨が降らず、無事に実験を終えることができました。50×50cmの範囲に3時間火入れを行ったのですが、案外、小さな範囲内でも均一に焼くことは難しいことが分かりました。学生も含めて4名がそれぞれの火入れ区の番をしながら3時間を過ごしたのですが、薪をくべたり並べたりで、不思議と退屈しませんでした。



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火入れ終了後、炭となった薪は回収して穴を掘った上で水をかけて消火しました。それぞれの処理区に“播きだし”を行った後、新たな種子が散布されるのを防ぐために、遮光率の低い寒冷紗でトンネルをつくって実験は完了しました。


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森林の中の埋土種子には、現在の森林を構成していない樹種の種子もたくさん含まれる(眠っている)ことが知られています。もしかすると一か所だけ火入れを行ったシラカバ林の土の中にも、近くには存在しないタラノキ、ニワトコなどの種子が埋まっていたならば、それらが今回の火入れによって芽を出したりするのかもしれません。今回、どんな樹種の種子が「火入れ」によって“起こされる”のか、はたまた、火が強すぎて全滅しているのか、各処理区の今後が楽しみです。





2010年6月20日日曜日

山中湖村の草山



本日の山中湖:最低17℃、最高23℃、くもり


教養学部講義の総合科目「森林―人間系の科学」の現地講義が


19-20日の二日間、富士演習林及び山中湖内で行われました。


今年は草山にターゲットを当てたテーマで学生にいろいろ


調べてもらいました。


日本ではかつて山の大半が草山だったと言われているにもかかわらず、


現在の草山の割合は1パーセント台とごくわずかです。(2005年センサス)


いっぽう、山中湖村では、4パーセントほどの草山がいまだに残っています。


・草地はどんな条件で成立するのか


・日本人は草山をどう扱ってきたのか


・山中湖村はどういう地域なのか


学生には事前にこのようなことを下調べしてから、現地講義に


臨んでもらいました。


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初日は山中湖村の草山にみんなで登って、植物観察と植生調査を


してもらいました。


山焼きによって維持されている草地と、刈り払いによって維持されている


草地をそれぞれ訪れました。


刈り払いをしているところの方が、木本植物が多いようだということ


が分かりました。


また、手が入らず草山から森林に移り変わる途中段階も観察できました。


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運よく山中湖と富士山を一望できて学生も喜んでました。


2日目は、地元の方々に昔の暮らしと草山のつながりについて


インタビューしました。


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かつての草山利用を伺わせる茅葺き屋根は、この地区ではこの1軒のみ


となっているそうです。


1年生の学生たちは奮闘しながら、今回の学習のまとめに励んでいます↓


http://lecture-wiki.ecc.u-tokyo.ac.jp/index.php?akio%2F2010





2010年6月11日金曜日

初夏の賑わい



本日の山中湖:最低気温9℃、最高気温25.3℃、快晴


林内を歩いていると、


喉の渇きをおぼえるような一日となりました。


気温の上昇とともに飛び交う虫さん達の数も増え、


顔にパチッと体当たりなご挨拶もしばしばです。


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見上げれば、フジです。ようやく咲いたんですね。


なんとも涼しげな藤色と若々しいグリーンがたまりません。


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ミツバウツギも次は私達よと言わんばかりに、


林内のあちこちで白い花が開き始めました。


鳥さん達も動きがとても活発です。


どこにいてもさえずりが響いてきます。


キビタキ・シジュウカラ・ヒガラ・ウグイス・ホトトギス・センダイムシクイ・メジロ…


なわばり争いをしているキビタキさんの動きに目を奪われていたら、


目の前にセンダイムシクイさんが現れました。


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さえずりは「チィ、チヨチヨ、ツィー」など、


特徴があってすぐに分かるのですが、


小さなオリーブ色の体のためなかなか見つけられません。


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いも虫をくわえて子育て真っ最中のシジュウカラさん。


カメラをかまえる私に警戒も忘れません。


お邪魔してごめんなさい。


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初夏真っ盛りではありますが、


富士山はまた雪が降ったようで白さが増していました。


今年はいつまで雪が残るでしょうね。





2010年5月28日金曜日

ブナ試験地等見学



本日の山中湖:最低6℃、最高19℃、晴れ時々曇り


また肌寒さがぶり返した山中湖です。


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すでにやや散りかけですが、今年のズミもたくさんの


花をつけています。


去年はほとんど実がつきませんでしたが、今年はどうでしょうか。


さて、今日は東邦大学理学部の富士演お得意様の先生と


その学生さんに来ていただき、一緒に林内をめぐりました。


富士演スタッフも新しくなったこともあり、林内のブナ試験地等


で行われている研究について勉強させていただき、非常に有意義


でした。


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ブナ産地別試験地では、産地による形態の違いが一目瞭然です。


ブナ形態の変異は環境によって決まるのではなく、遺伝によって


決まるのだということが確かめられます。


今後の林内解説のポイントとなりそうです。


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枝垂れのブナ!?と思ったら、やけに当年枝(今年伸びた枝)の成長が


いいイヌブナでした。


垂れてみえる部分は全て展葉してから延びた部分で、1か月足らず


で50センチほど伸びていたことになります。


あらためて見るとすごいですね。。。


そうそう、この時期の異彩を放つヤツを紹介しましょう。


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イヌエンジュ(マメ科イヌエンジュ属)です。


この木は展葉が遅く、ようやく今頃開きかけなのですが、新芽が


細かい綿毛に覆われるため白銀色に輝いてきれいです。


木材は床柱などに使われます。





2010年5月17日月曜日

都留文大の実習



本日の山中湖:最低7℃、最高18度、晴れ時々曇り。


15-16日と山中寮に泊まりがけで、


都留文科大学社会学科環境コミュニティ創造専攻の


「地域資源管理・環境保全実習」が行われました。


15日は、遅い春の歩みのおかげで展葉しきっていない


状況に悩まされながらも、樹木の同定に有効なポイントを


学んでもらいました。


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上の写真は事務所の裏庭で検索表を使っての同定演習です。


やはり、なかなか難しかったようです…。


また、しばらく手入れされていない林内で、柴刈りを体験して


もらいました。


ただ刈るだけでは面白くないので、刈り取った柴で柴垣を


作ってもらいました。


みんな面白がって大張りきり。


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現実的な利用として組み込むことで森林管理行う手法がある


という感覚を持ってもらえたようです。


16日は、薪割りと薪積み。


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最初はやはり危なっかしかったですが、徐々にさまになって行きました。


やはり「ハマった」学生も何人か。


実は、前の晩、山中寮で暖炉に薪をくべ、薪のぬくもりを体験して


もらっていました。


そのせいもあってか、今日もやる気満々の都留文の学生さんたち


でした。





2010年5月15日土曜日

豪快です



本日の山中湖:最低気温5℃,最高気温13℃,曇り時々晴れ


あまり気温が上がらない肌寒い一日となりました。


そんな気候の中、


陽ざしがさし込む小さな水たまりで、


ヒガラに出会いました。


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水浴び方法は、なんとも豪快に、そして念入りに。


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お手入れに夢中なヒガラがいると思えば、


ノジコは自慢の歌声を披露、


シジュウカラ・メジロ・キビタキは、


ペアで盛んに飛び交い、追いかけっこに夢中でした。


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足元には、満開のムラサキサギゴケが。


平年より低い気温が続くせいか、


花の季節はゆっくり進んでいます。





2010年5月7日金曜日

初夏到来



本日の山中湖:最低8℃、最高30℃、晴れ


春らしくない寒い4月が過ぎたと思っていたら、一転して


初夏の陽気が続きます。


今日は30℃を超えましたが、山中測候所観測史上初の


5月の真夏日だったそうです。


この陽気で林内の緑は一気に濃くなりました。


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コハウチワカエデ(カエデ科カエデ属)の展葉です。


芽鱗の赤と新緑の対比が鮮やかです。


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ツタウルシも芽吹き始めました。


よくかぶれる人の話によると、春が一番かぶれやすいのだとか。


お気をつけて。


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夏鳥のキビタキも姿を見せ始めました。